ユーザーイリュージョン―意識という幻想

ユーザーイリュージョン―意識という幻想ユーザーイリュージョン―意識という幻想
Tor Norretranders 柴田 裕之

紀伊國屋書店 2002-09
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数ヶ月前からジワリジワリと読み進めていた本。章ごとにトピックが独立しているので、自分が興味のあるところだけを拾い読みしたり、同じところを何度も読み返したりできるのがイイ。

マクスウェルの魔物から始まり、熱力学、エントロピー複雑系情報理論、心理学、脳神経学、ガイア理論、フラクタル、核戦争とという、かなり広範囲なトピックを扱っているのだが、全体としては「意識という存在の欺瞞性を暴く」ことに主軸が置かれ、非常にテンポのよい論理展開をみせている。

さて、この本のタイトルにもなっている「ユーザイリュージョン」とは、

パソコンのモニター画面上には「ごみ箱」「フォルダ」などの様々なアイコンと文字が並ぶ。実際は単なる情報のかたまりにすぎないのに、ユーザーはそれをクリックすると仕事をしてくれるので、さも画面の向こうに「ごみ箱」や「フォルダ」があるかのように錯覚する現象
を指す。つまりは、現実世界に存在する事物をメタファーとして利用することで、ユーザーに対して効率的に理解を促す手法、とも言い換えられる。

そして本書の論旨は、私たちが日常的に感じている「意識」というものは、全て錯覚でありユーザーイリュージョンであるということを、あらゆる角度から証明するということにある。

一つ一つのトピックについての感想を書き出せばきりがないのでここでは割愛するが、"情報 (Information)" という曖昧かつ奥深い代物を商売道具にしているIT技術者にとって、一度は手にとってみる価値があるのではないかと思われる。私のような文系出身のIT技術者は特に。