発展停止国

フィリピンは、意外なところで最先端をいってたりする。

例えばこの写真は、MRT(Mass Rail Transit)というマニラを走るモノレールの車両連結部である。これまでの電車や地下鉄だと、車両連結部分は、とても不安定でまともに立っていられなかった。しかし、このタイプの車両連結装置は、車内と同じ乗り心地が実現できるのである。

この間偶然NHKのニュースで見たのだが、東京の山手線でこのタイプの車両連結装置がやっと導入されることになったとのこと。ニュースを見たときには、「へぇ、すごいなー。やっぱ日本って進んでるー」と感じた。しかし、マニラにてMRTに乗って、この車両連結装置がふつーに使われていたのを見たら、「え、フィリピンの方が進んでるじゃん・・・。」と思ってしまった。

また、高速道路においては、ETCの料金ゲートが日本よりも多い。しかも多いだけではなく、それを利用する車も一般車両と同じくらい走っているのだ。日本では、まだまだETCは発展途上だが、フィリピンの高速道路では随分前から普通に使われていたとのこと。外見はボロボロのバスでも、料金所を通過するときは、ETCをスーっと通り抜けていく。日本でETCのゲートをくぐっている車を見ると、「すすんでるー!」と思っていた自分は何だったのかと思ってしまう。

インフラ面でフィリピンが進んでいる理由は、その開発がここ10数年という直近に行われているからだ。日本のように何十年も前からインフラが整備されている国では、逆に変更が難しい。国民が慣れ親しんでいるやり方を変える方が、新規にものごとを導入するよりもエネルギーとコストを要するからである。これと同じ状況はフィリピンのみならず、アジア諸国で見られる。タイの高速道路でも、フィリピン同様ETCの普及率が非常に高い。

安定したものを愛し、変化を好まない日本特有の体質は、科学技術の発展、そして経済の発展を阻害しているといえる。「先進国」と呼ばれるようになった今日の日本は、発展の頂上に上り詰めてしまったがゆえに、その先の進むべき道を見失っているような気がする。いわば「発展停止国」だ。世の中の流れに柔軟に対応できるフットワークを身に付けなければ、日本が発展途上国にどんどん抜き去られていく日も遠くないのではないだろうか。