携帯電話

フィリピン隊員は全員、JICAより携帯電話を貸与される。

携帯電話が普及している国においては、協力隊員に対して必ず携帯電話が貸与され、携帯電話が使えない国では、無線が貸与されるようになっている。これは、情勢の悪化などによる、緊急連絡を迅速に行うための手段としての目的が主であり、協力活動に使用するものではない。といっても、自分で料金を支払って使用する分には文句は言われないので、みんな家族への連絡や隊員同士の情報交換などに有効活用しているようだ。

フィリピンの携帯電話は、日本・韓国などの一部の地域を除く多くの国で採用されている、GSM(Global System for Mobile communications)と呼ばれる携帯電話ネットワークを使用している。GSMの携帯電話は、「SIMカード」というICチップを取り付けて使用する。電話番号などの情報は、このSIMカードに登録されているので、基本的に携帯電話の本体を変えても、このSIMカードさえ同じものを使えば番号は変わらずにすむし、課金情報なども引き継ぐことが出来る。

また、日本で一昔前に流行ったSMS(ショートメッセージサービス)は、ほとんどのGSM携帯電話機において使用できる。SMSとは、最高160文字までの長さの文字や数字を、メッセージとして送受信のできるサービスで、同じGSMのネットワークにつながれていれば、国境は関係ない。

通話料金は、プリペイド式のカードを購入して携帯電話にロードすることで、買ったプリペイドカードの料金分だけ使用できるという仕組み。日本などのように、クレジットカードからの自動引き落としや、後日の振込用紙による清算とは違って、使いすぎてしまうことがないという点においては、よいシステムだと思う。しかし、やはり通話中もカードの残高を気にしながら喋らなければならないので、ちょっと落ち着かないという欠点もある。

いずれにせよ、発展途上国と呼ばれる国でも、携帯電話の普及率は凄まじい勢いで伸びている。しかし、フィリピン国民の実際の生活水準と、携帯電話という最先端の仕組みが融合した社会の様子は、妙な不自然さを生み出す。雷が鳴れば停電が起こり、大雨が降れば街は水没する。人間生活に最低限必要な社会インフラも満足に整備されていないこの国に、経済大国から欲望と共に運ばれた情報インフラだけが一人歩きしている。自分がコンピュータ技術の隊員としてこの国に来た理由を今一度再考する必要がありそうだ。