場の空気

小学生の残酷な人間関係を垣間見た。

午後3時頃、JR大和路線で奈良に向かう途中のとある駅で、男の子1人(以下、ブサイク君)と女の子2人の3人組の小学生が乗り込んできた。

当初3人は、ポケモンのカードゲームをしながら楽しそうにしていた。そんな最中、恐らくクラスメイトであろう男の子(以下、ハンサム君)が隣の車両からやってきて、3人と一緒の席に座った。それからというもの、女の子2人の視線はその男の子に釘付けになり、もはやポケモンゲームどころではなくなってしまっていた。ハンサム君は、恐らくクラスで大人気の男の子であろうことは、容易に想像がついた。

最初こそ4人で仲良く話をしている様子だったのだが、気がつくと女の子2人とハンサム君が3人で会話を楽しんでいるという形になり、ブサイク君はまったく相手にされていない状況が生まれていた。ブサイク君は、とんだ邪魔者が入ったことで、女の子2人を横取りされた気分になり、かなりむかついていたことだろう。案の定、ブサイク君は、無言で他の車両に走り去り、誰もそれを止めなかった。その後も女の子2人とハンサム君は楽しそうに会話を続けていた。隣の車両でうつむきながら座っているブサイク君がいるとも知らずに。

子供は場の空気を読むという芸当を持っていないが為に、時として残酷な天使となる。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いという意思表示がはっきりしているので、無意識のうちに人を傷つけていることが多々ある。しかしそれは意図的なものではなく、単に本能に素直に行動しただけなので、攻め入る余地は無い。しかし、これが人間の本質かと思うと、少し背筋が凍る感じがした。大人であっても、この類の残酷さは内に秘めていて、表に出さないだけなのだから。