ベロニカは死ぬことにした

先日のアルケミストに続いて、パウロ・コエーリョの作品をもう一冊読んだ。

4042750052ベロニカは死ぬことにした
パウロ コエーリョ Paulo Coelho 江口 研一

角川書店 2003-04
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本書は、アルケミストとは一転して、終始暗いムードが漂う小説である。しかし読後には「生」と「死」に対する前向きな再検討を余儀なくされ、自己を省みる機会を与えてくれる。

呉越同舟な環境が生み出す不思議な効用により、生に対する希望を見出す主人公の思考の軌跡を通して、今私達が「常識」と考えているものは何者なのか?という問いかけが繰り返しなされ、読むものを「常識」と「非常識」の狭間に迎え入れてくれる。

「普通」とは何かについてのあくなき問いかけに対しては、キーボードの配列がなぜQWERTY式になっているのか?や、時計はなぜ右回りに回るのか?など、人々が日常に当たり前と思って疑問にも思わない事象を取り上げている点も、読者を飽きさせない効果を生んでいる。

より多くの人が常識だとしたことが「普通」となり、それにそぐわないことを考えている人は「狂気」の人だと排除される現代社会の病に焦点をあてている本書は、小説としての面白さもさることながら、ノンフィクション作品としての使命も果たしているのではないだろうか。

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