問題解決能力

フィリピン人技術者に足りない能力が、少しずつだが見えてきた気がする。

それは、障害発生時の問題切り分け能力だ。うちの大学では、学内のインターネットカフェにあるHUBから、コンピュータルームまでの約50mを一本のUTPケーブルで繋ぐことで、ネット環境を実現している。が、このUTPケーブルは裸で屋外を這わしてあるため、牛がケーブルをまたいでいったり、バスケをしている生徒がつまずきそうになったりと、いつ切れてもおかしくない環境にあるのだ。

そして、(今の状況からして当然なのだが)数日に一回くらいのペースで、ネットがつながらない状態が発生する。問題は、その時の職員の対応だ。自分たちで何をするでもなく、「Linuxサーバが壊れてる」で片付けようとするのだ。Linuxサーバは、私が赴任後に初仕事として設定したものだ。インストールから設定まで一通り教えてはいるものの、まだまだ誰も使いこなせるという域にまでは達していない。その為、ネットがつながらなくなった=Linuxサーバが壊れてる=Niko(私)が直してくれる。という、職員にとっては楽な図式が成り立っているのだ。

しかし、ネットがつながらなかった時の原因の多くは、他の部分にある。それは、ADSLルータやHUBの電源が入っていなかったり、ケーブルが外れていたり(または切れている)、インターネットカフェの接続がCloseしていたりなどなどである。つまり、ほとんどのケースでは、Linuxに一切触れることなく解決できる問題が多いということである。

そこで、今からやろうとしているのが、ネットワーク障害発生時におけるトラブルシューティングの教育だ。問題の原因を、論理的なフローチャートで切り分けていく力を身につけることで、職員が自分たちだけでインターネット環境を維持できるようになって欲しいからだ。

青年海外協力隊の隊員数が世界でベスト3に入るという事実は、この国にとっては不名誉なことだと、個人的には思っている。私は一生ここにいるわけではない。むしろ技術ボランティアがこの国から一人もいなくなることこそが、フィリピンにとって理想の状況なのだから。