カンティーンのおばちゃん

ふと自分が一番よく接しているフィリピン人は誰か?と考えてみた。

するとそれはカウンターパートでも学生でもなく、カンティーンのおばちゃんであることが判明。カウンターパートは昼間授業があるので、下手したら丸一日会わないこともあるし、学生も俺が直接授業をしているわけではないので挨拶程度だ。

けど、カンティーンのおばちゃんには一日一回は必ず会って話しをする。それは自分が毎日カンティーンで昼ごはんを食べてるからだ。

このおばちゃんは英語全然しゃべれないし俺もタガログ語はほとんどダメなので、会話というほどのものではないのだが、それでも不思議とお互いに意思疎通は出来きている。

「今日は何食べる?」
「えーと、アドボとフライドチキン」
「あんたいつも肉ばっかりだね。たまには魚食べなさい」
「はーい」

とか

「おばちゃん今日は野菜ないの?」
「ないねぇ。野菜じゃないけどマンゴーおまけしてあげるよ。」
「わーい」

場合によっては、

「今日はこれ食べなさい」
「はーい」

と、一方的に決定される場合もある。

これらの会話は、ほとんど料理の名詞と基本的なタガログ文法だけで成り立ってるのだが、お互いにこれ以上複雑な文章を用いなくとも、十分に理解し合えてると思うのだ。

おばちゃんは、俺が大学で何してるのかも知らないだろうし、どこに住んでるのかも知らないだろう。

けど、おばちゃんは、シニガンの具がエビのときは俺は食べないけど、豚のときは好んで食べることを知ってるし、ご飯の量は普通盛りの1.5倍くらいが俺のお腹にちょうどいいってことも知ってる。そして、コーヒーには砂糖もミルクも入れないことを知ってるし、おやつはチョコレート菓子が好きでスナック菓子は滅多に食べないことも知っている。

なんか、高校生の息子と母親の関係みたいだ。思春期の男の子はおかんとの会話をあまり持たないけど、おかんは息子が朝ご飯に米じゃなくてパンを好むことを知ってる、みたいな。