まとまりのない雑感

セミナーにたまたま参加していたJICAの専門家のご好意に甘えて、プロジェクトサイトの見学に行ってきた。

upittc訪れたのは、UPデリマン校CSRC内にあるUPITTCというIT人材育成センター。ここは、ソフトウェア開発などの高付加価値型のIT産業育成を目指して、日本のIT企業などでバリバリ働けるような人材を育てるための活動を行っている。

UPITTCでは、JICAから専門家(教材作成、IT研修機関運営や産業界との連携などを行う)が3人派遣されており、大きなプロジェクトとして動いている。フィリピンにITの専門家が派遣されているという話だけは聞いたことがあったものの、協力隊員と専門家とは住む世界が違うので、これまでは全く接点がなかったのだ。

そんな専門家のプロジェクトサイトを見学させてもらった感想を、フィリピンの現場で1年半働いてきた協力隊員という立場で客観的に述べてみたい。

1. 機材が豪華すぎ

写真の富士通製ラックサーバがあったのを見た時、思わず目を疑ってしまった。日本ではもちろん日常的に使っていた代物だが、フィリピンでラック搭載型サーバを見たのは初めてだ。もしかして大規模なポータルサイトでも運営しているんですか?という疑問が浮かんだが、ここは研修センターなのでそんなことはありえない。また、教室のPCが全てメーカー製でディスプレイは液晶。さらにUPSも一台につき一個装備されている。フィリピンに赴任してから、自作PCと違法ソフトウェアと20台でシェアするUPSしか見たことがなかった自分にとっては、ここが本当にフィリピンだとは思えなかった。

2. 授業料高すぎ

年間の授業料が8万ペソだそうだ。自分は協力隊の奨学金委員会をやっていたので、大学の学費については大体理解してるのだが、フィリピン超一流の私立大学を見回してみても8万ペソという授業料の大学はあまりない。国立大学だと1万ペソあればお釣りがくる。

scholarshipじゃあ、どうやって学生はお金を工面しているかというと、日本企業からの奨学金制度という仕組みがあるのだ(右写真参照)。つまり、入学前に日本のIT企業が面接などで優秀な学生を選抜し、学費を全額工面してやる。そして卒業したあかつきには、奨学金をもらった日本企業にちゃんと就職してね、という感じ。言ってしまえば青田買いとやってることは何も変わらない。

3. 「能力が優れている」という条件だけでは入学できない現実

2. で述べた通り、UPITTCの学費は8万ペソ。そしていくら奨学金制度があるとは言え、それを獲得できるのは一握りの学生だけだ。そして運よく学費を奨学金で得られても、生活費が工面できないという現実的な問題が出てくる。つまりは、能力にプラスしてある程度の財力が無ければUPITTCで学ぶということは不可能と言わざるを得ない。

じゃあ、働きながら通えばいいじゃん、と思われるかもしれないが、それも不可能なのだ。うちの配属先の大学の2部学生なんかだと、昼間は働いて夜と土日に学校で勉強するということが可能だ。しかしUPITTCのカリキュラムはとてもハードで、「日本語教育」「ビジネススキル」「ITスキル」という3つの授業を柱にして朝の8時から夕方の5時までみっちり授業があるのだ。これでは働こうにも時間が限られる。

まぁ、言いたいことを色々と書いたが、別にODA批判を行うことがこのブログの目的ではないし、ODAの予算内で活動している協力隊員という自分の身分を鑑みれば、あまり大きな口を叩ける立場にはない。

しかし、ODAの目的(ODA大綱参照)が日本企業の発展にあることを堂々と謳っており、日本企業にとって旨みのある開発プロジェクトでないと意味がないということは頭の中では理解していたが、自分が活動する協力隊の現場と専門家の現場とがここまで世界が違うということを見せつけられると、正直たくさんの疑問符が頭をよぎってしまう。

政府開発援助(ODA)大綱
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/taikou.html
University of the Philippines Diliman
http://www.upd.edu.ph/
UP Information Technology Training Center
http://www.ittc.up.edu.ph/

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