国連とアメリカのインターネット統治問題

米国と国連、土壇場で衝突回避--インターネットの統治問題で [CNET Japan]

チュニスチュニジア)発--当地で開催されている国連サミットにおいて、ブッシュ大統領政権とその批判勢力が世界的なインターネットの統治に関する包括的な合意に達し、今週中に劇的な結末が訪れる見込みがなくなった。
数ヶ月前から、国連発展途上国のIT担当大臣たちがインターネットの運営に関して、アメリカが過度の影響力を持ちすぎているとした主張を続けてきた。

国連の作業グループが、国連もしくはITU(国際電気通信連合)がインターネットの重要な機能を監視するべきだという提案をして間もないが、今回のサミットで、包括的な「Internet Governance Forum」を設置し、議論を継続するということでお茶を濁した形となった。

問題の根源となっていたのは、トップレベルドメイン(.comや.ukなど)やIPアドレスの割り当て、ルートサーバの運用といった、インターネットの根幹を担う機能の管理・運用をアメリカが独占してきたという事実だ。技術発展の軌跡を鑑みると、もちろんアメリカが重要な役割を果たしてきたことは否定できない。しかし、インターネットが途上国にも急速に普及し始め、スパムやデジタルデバイドの問題が顕在化してきた昨今では、アメリカ単独支配に対する不満や問題点が噴出しているのも至極当然の流れだ。

以下、発展途上各国のこの問題に対する主張を抜粋する。


シリア:「スパムの数は毎日増え続けている。被害者は誰かといえば、発展途上国後進国である。スパムの運搬役となっている国はスパムを止めようと真剣に考えていない。スパムが利益になるからだ。我々は、スパムの発信源となっている国からスパムに対応するための装置を購入するしかない。しかし、これは、とても受け入れがたいことだ」

ブラジル:(ICANNが.xxxドメインを承認したことに関して)「xxxが何を意味するか知らない人のために、はっきりさせておくが、これはポルノのことだ。大半の国では、これは価値観に深く根ざした問題だ。我が国では、このような新しい汎用のトップレベルドメインを作成することを簡単に決定してしまうような意志決定プロセスに懸念を抱いている」

中国:「我々はインターネットの公共政策問題は国連の主権国が協力して解決すべきだと思っている。たとえば、スパム、ネットワークセキュリティ、サイバースペースといった問題を解決するために、国連に適切な専任機関を設けるべきだ」

ガーナ:「専任の組織を設立する必要があることには既にすべての国が賛成している。この組織はインターネットに関連するすべての問題を、今利用できる専門知識の範囲内で解決するのがよい。そうすることで専門知識は国連に根付くことになるだろう」

国連や発展途上各国が発するこれらのメッセージは、どれも間違ってはいない。しかし、ブッシュ政権は国連のこのような外堀を固めて一斉攻撃してくるようなやり方が気に食わなかったらしく、「インターネットを巡る権限は誰にも渡さない」という強行姿勢を見せていた。それを受けたブラジルや中国などの大国も、独自にルートドメインを設置しようとする動きを見せるなど、非常に緊迫した状態が続いていた。

しかし、今回の国連サミットでは、何の監督権も規制権も持たない「Internet Governance Forum」というものが創設され、そこで議論の継続を行うということが決議されただけで、事実上な何も変わらないということになる。

国連のアナン事務総長も、「アメリカがインターネットの監督権を公正かつ粛々と施行していることは認めるが、変化が必要になっている」と語り。また、「国連にはインターネットをコントロールしたり監視したりする意図はない」と言ったとのこと。つまりは、国連は地球上で起こっている様々な問題に対して「平和的な話し合い」をする場は提供するが、国連が力を持って何かを実行することは無いということだ。

となると、今後この「Internet Governance Forum」でどのような話し合いがなされ、どのような決定事項が生まれてくるのかという点に注目が移ることになる。しかし、ドックイヤーと呼ばれるIT業界では、問題を先送りにすればするほど、新たな問題が次から次へと生まれてくるということも忘れてはならない。

米国と国連、土壇場で衝突回避--インターネットの統治問題で [CNET Japan]
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000050156,20091083,00.htm
ネット管理体制協議で多国間機関設置へ・準備会合で合意 [NIKKEI NET]
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20051116AT2M1600516112005.html

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