ムカついたことはブログに書かない

私は出来るだけ、楽しかったこと以外はブログに書かないようにしている。

blog-photo-20050506.jpgフィリピンに住んでいると、文化や慣習が違うのでムカツクことなど山のようにある。それこそ、毎日といっていいほど一つや二つはムカツいている。しかし、これらを感情ダイレクトに全て書き連ねていると、ただのフィリピン批判ブログに成り下がってしまうので、私は努めて批判的内容の文章は書かないようにしている。

時としてフィリピンのムカつく文化について触れることはあるが、それは自分なりにその文化を受け入れられた、もしくは理解できたという前提で、可能な限り客観的且つ慎重に書くようにしている。なぜなら、一時の怒りの感情に掻き立てられた文章というものは、読む者の気分を損ねるばかりでなく、自己に対してフィリピンの嫌な文化を刷り込ませてしまうという危険性を孕んでいるからだ。

文章を書くという行為は、思いのほか自己のアイデンティティー形成に大きな影響を与える。一瞬なんとなしに思い浮かんだ感情でも、それを文章に落とすという作業を通すだけで、その感情は自分の中で確かなものとなり、ある種の確信を得てしまうのだ。

その場限りで忘れてしまえるような些細ないざこざでも、いざそれを文章に落とすと、何倍もの大きさの傷跡・怨念となって自分の中に残ることもある。人間に与えられた「忘れる」という特殊技能は、本来自己の性情安定の為に有効活用すべきものであり、「ムカつく」という類の感情は、この「忘れる」というアビリティによってブラックホールに投げ込むほうがベターなのだ。

協力隊の2年間の中では、数え切れないほどの喜怒哀楽を感じるだろう。そして、私は最終的に「喜」と「楽」が80パーセント、「怒」と「哀」が20パーセントくらいで終われればいいなぁと思う。しかも、20パーセントの「怒」と「哀」は、後になって笑い話の種になればと、安直ながらも考えている。それを実現するためにも、「怒」と「哀」については、これからも文章にはしないだろう。少なくとも公の文章には。