先住民族の知恵

アエタ族の知恵と技を学ぶトレッキングツアーに参加してきた。

場所は、ピナトゥボ火山の噴火によってアメリカ軍が撤退した場所の跡地に作られた、スービック経済特別区(Subic Bay Metropolitan Authority)の中にある、JEST(Jungle Environmental Survival Training) Campという施設。

このスービック経済特別区は、自由貿易の発展を目的として、海外企業の誘致、観光、サービス、運送などの開発が活発に行われ、日本企業も多く進出している。特区の中は、「ここはフィリピンか?」と思うようなキレイな道や整備された建物ばかりで、しばし異国にきた気分を味わえる。

この特区のゲートからジープで20分くらい山に入っていったところに、JEST Campはある。ここでは、山で採取した竹を使ってのおみやげ物が買えるほか、本場アエタ族の生活術を実体験することが出来る。

私達が参加したのは、2時間のトレッキングコースで、ガイドが一人ついてくれる。彼と一緒に山の中に入っていくわけだが、なかなか険しい道のりで、久々にいい運動になった。ガイドの方が、ところどころで立ち止まり、傷口に塗ると血が止まる葉っぱや、幹を割いて水でなますと、泡が立つシャンプーへと変身する木、竹から水分補給をする方法など、先住民族の生活術をあますことなく教えてくれた。さすが、戦時中にアメリカ軍がゲリラ戦術を学んだ部族だけあって、実用的な技を数多く持っている。

なかでも感心したのが、枯れた竹だけを使って、火をおこす方法。文章では説明できないが、まるで手品のように、一瞬で火をつけてしまうのだ。キャンプに行くときには一緒に来て欲しい人材だと、本気で思ってしまった。

これらの技は、もはや国宝級の伝統技術の域に達している。無駄が一つもなく、ただただ「生きていく」為だけに洗練された技で、見ているだけで美しい。経済発展も大切だが、こういった伝統を受け継いでいくことも、同じくらい重要なことだということを再認識させてくれる、いい機会となった。

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