フィリピン流儀

最近、夜な夜な近所のオヤジ達と呑む酒が非常にうまく感じる。

なぜだろうかと色々考えてみた結果、日本とは根本的に違う人付き合いの文化が、フィリピンには根付いているからだという結論に達した。

それはとても日本では受け入れられない類のやり方であり、当然日本人である自分も最初はとまどいまくりの日々だった。

フィリピン風の飲み会の流儀としては、

  • グラスを二つ用意して、一つのグラスにエンペラドール(ブランデー)、そしてもう一つのグラスには水を入れて、クイっと交互に飲み干す
  • 飲み終わったら、隣の人にグラスをパスする
  • 食べカスやゴミは地面に捨てまくる
  • 飲み終わる頃に、みんなご飯やパンシットをたんまり食べる(しかも飲み会が開かれている人の家に勝手に上がって、食えるものは全て食い尽くす勢いで)
  • 誰か新しい参加者が来たり、また先に帰ったりするときにはハグしながら握手する
  • 基本的に誰でも参加OK
  • 人のタバコであろうと気にせずにバカバカ吸う
  • 小便は基本的にその辺でやる。最近は、俺んちの裏の壁がよく使われる・・・。
  • 飲みながらした約束は、完全に忘れ去られる
などなどである。

最初は、このフィリピン風の「流儀」が簡単には受け入れられなくてとまどったものである。「グラス回し飲みかよー、腸チフスになったらどうしよう・・・」とか、「人のタバコ勝手に吸うなよー」とか、「ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てろよー」とか、「こんなに人の名前覚えられねぇーつーの」とか、「よく人んちの飯を遠慮無しに食いまくれるなー・・・」とか、いちいち心の中で突っ込みを入れていた。

しかしだ。最近では、自分の挙動が完全にフィリピン化しているではないか。誰のものでも関係なく飲み・食い・吸い、腹が減ったら勝手に家に上がりこんで、食えそうなものを物色するし、ナッツの食いカスとかをバンバン地面に捨てまくり。挙句の果てには、自分の家の壁に向かって立ち小便ときた。

「あー、麻痺してる」と思うのだが、なぜだか彼等と飲むのが非常に心地よい。変な気を使わなくてもいいし、何でも本音で喋るし、ジョーク満載だし、けど時にはまじめな話もするし。特に、自分が飲み会の輪に入っていく時に、みんなが立ち上がってハグしてくれるのがイイ。「歓迎されてるー!」という気分になるのだ。これはもちろん俺だけでなく、誰が来てもそうだ。自分も、誰か新しい来客が来たら、知ってる人でも始めての人でも関係なく笑顔で挨拶。そして5分後には飲み友達になってるのだ。

また、昨日なんかは、みんなが飲んでる輪の端っこで、若い女の子が失恋したらしくて泣いていた。そんな時もこっちのオヤジ連中は、とっかえひっかえ女の子に声をかけまくる。あるオヤジは真剣に女の子の話に耳を傾けてやるし、またあるオヤジはジョークを連発してなんとか笑わせようと試みる、またあるオヤジはお節介にも、独身の若い男を連れてきて、「こいつと付き合え」と強制的に見合いをさせたりするのだ。そんなこんなしているうちに、いつしか女の子も笑顔を取り戻していくのだ。そんな様子を見ていると、フィリピンのオヤジ達は、腹は出てるけどカッチョイイなーと思う。

日本の居酒屋が恋しいと思うこともたまにあるが、今はこのフィリピンのハチャメチャ飲み会にぞっこんだ。飲みすぎないようにしようとは思っているが、夕方になると「飲むぞー」と声がかかるのでどうしようもない。生来誘いを断れない(断らない?)性格なのでね。ボランティアしに行って、飲んでるだけかよ!という突っ込みをされるのは重々承知だが、相互理解を深めないことには次のステップには進めないじゃないか(言い訳?)