難民認定プロセスの構造欠陥

法務省、クルド人親子を強制送還 UNHCRなど抗議 [asahi.com]

国連難民高等弁務官事務所UNHCR)から難民(マンデート難民)と認められる一方、日本政府には認定されずに支援を求めていたトルコ国籍のクルド人、アハメッド・カザンキランさん(49)と長男ラマザンさん(20)が18日、法務省入国管理局によって母国に強制送還された。日本にいたマンデート難民が本人の意思に反して強制送還されたのは初めて。UNHCRなどが抗議している。

今回の事件で、法務省入国管理局は「UNHCRとは難民の解釈や認定の目的も違う。手続き過程で虚偽の申請もあり、送還が相当と判断した」との会見を述べている。この発言の根拠となる東京高等裁判所、平成12年9月20日判決では、

難民条約及び同議定書には、難民認定に関する立証責任や立証の程度に関する規定はないから、難民該当性の立証基準に関し、国連難民高等弁務官の見解を条約解釈の補足的手段として参照すべき必要性はない。国連難民高等弁務官がマンデート難民として認定した場合であっても、それをもって直ちに法務大臣の判断に根本から見直すべき問題点があるとはいえない。
と判示している。

つまりは、国際社会による難民認定と日本による難民認定とはどちらが優先されるべきなのか、またどういう手順で難民認定がなされるべきなのか、が明確に決まっていないという構造上の欠陥が露呈した形になったのだろう。東京地裁東京高裁とで判決内容に違いが出たのも、こういった背景があるからだ。

日本国内での、難民認定プロセスはしっかり決まっているのだろうが、それが現在の世界情勢や世論をリアルタイムで反映し、かつ国際社会の中での難民認定プロセスと十分に連携が取れていないとすれば、それは「悪法も法なり」という法の理念を逆手に取った日本の怠慢としか言えない。

また、今回の事件で今後議論されるべきは、

  • 最高裁で、退去強制処分の取り消しを求めて係争中に送還するのは、果たして合法的な措置だったのか?
  • 第三国への出国のための在留特別許可を出すなどの措置は出来なかったのか?
といった点だろう。

世論・マスコミも、日本政府が、種々のニュースにまぎれてお茶を濁さぬよう、事の成り行きをしっかり見ていく必要がある。

UNHCR Japan(国連難民高等弁務官事務所
http://www.unhcr.or.jp/
入管法改正電子フォーラム
http://www.kt.rim.or.jp/%7Epinktri/afghan/refugeeforum.html
クルド人難民二家族を支援する会
http://homepage3.nifty.com/kds/

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